第4章 問題をカスタマイズする 【2/3】

「文化の壁」と2つの「英語の障害」が及ぼす影響について

 

 これを踏まえ、もう一度上に挙げましたあなたとあなたの海外のカウンターパートとの「理解度」をチェックする5つの項目を見直してみてください。あなたやあなたのカウンターパートは、どの部分においては他の項目よりも理解度があり、どの部分の理解度が弱いでしょうか。じっくりと考えてみてください。(ここでしっかりと考えれば考えるほど、この後の章からご紹介する内容が活きてきますので、少し時間をかけてみてください。)

 

 

4.2. 海外の人たちと進める仕事の実情とは

 

 上で行いました自問自答のプロセスを踏まえ、今あなたが海外の企業や事業者と進めている仕事(もしくは近い将来行うことになる仕事)を客観的に見つめなおしてみましょう。自分が行っている仕事は、何ができれば達成したことになるのか、そして達成のためにはどのようなアクションが必要なのかを整理してみてください。それが終わったら、今度はあなたの海外のカウンターパートが行っている仕事についても、同じように整理してみてください。

 

 あなたが仕事を進めるには、あなたのパートナーからのインプットが必要でしょうし、まったく同じことが相手の仕事についても言えないでしょうか。整理した結果を踏まえ考えますと、今のあなたが結果を出すべく進めている仕事は、こんなことが言えないでしょうか。

 

    「自分に与えられた任務を遂行し目標が達成できるどうかは、よ

    く理解していない海の向こうのパートナーが、どれだけ自分の仕

    事を達成するために協力してくれるかにかかっている。」

 

 上の文章の「自分」を「自分の仕事相手」に置き換えることで、あなたのカウンターパートを取り巻く仕事環境を説明することもできます。これは今あなたが海外の人たちと行っている仕事の状態に、当てはまりますか? もしそうならば、あなたの仕事におけるパフォーマンスの良し悪しは、あなたが理解していない(もしくはあなたのことを理解していない)人たちがとるアクションで大きく左右されることになります。

 

 海外の人たちと仕事を進め、達成するには、「理解できない」人たちにあなたが必要とする形で協力してもらわなければなりません。どれだけ難しく、リスクが大きいタスクであるかが改めてよく分かります。

 

 とはいうものの、たとえ上に示したリスクがあるにしても、今行っている仕事は問題なく進んでいる、という人もいるかもしれません。さらには、これまでの仕事でもよい結果を納めた確固たる実績もある、という人もかもしれません。「理解していない」ことは確かにリスクかもしれないが、それ程大きなものではないと思う人もいるでしょう。しかしこの考えは、決して正しくありません。

 

 ではなぜこうした環境でも仕事を進展させられることができたのでしょう? それは単に、自分と海外のカウンターパートとの協力関係が、「運よく」できていただけだからです。そうです、「運よく」協力関係ができ、仕事の目的が一致していたのです。お互いが「理解できない」状況で、仕事の目的を間違いなく一致させるのは簡単なことではないことを認識する必要があります。

 

 あなたが行っている仕事の目的やプライオリティーは、今現在、本当に海外のカウンターパートと一致していますか? (一週間前ではなく、今です。)そしてこれから先も、一致した状態をキープできますか? もしこれに自信を持って「Yes」と言えないのであれば、あなたの仕事はいつ暗礁に乗り上げてもおかしくない状態になっていることを認識しましょう。

 

 

4.3. 英語という「共通事項」の落とし穴

 

 どんな人でもこれまで経験したことのない環境や、知らない人と長い期間接しなければならない環境に身を置くと、不安になったり緊張したりするものです。人間なのですから、そういう心理状態なるのは当たり前です。

 

 仮に、このような不慣れな環境に身を置く人が、そんな状況でも通用する道具・スキルを1つだけ持っていたとします。その人はこの道具に対し何を思い、そしてそれをどのように扱うでしょうか。ほとんどの場合、その人は自分がこんな不安な状況でも役に立つ道具を持っていたことを喜び、それをできる限り利用しようとするのではないでしょうか。その人のこの道具に対する信頼度は、自然に大きくなるでしょう。これは不安定な環境から早く脱却しようとする行為の表れですので、誰でもこうした行為を理解することができます。

 

 海外の企業や人々を相手に仕事を行う環境も、上の状況によく似ています。そしてコミュニケーションをとるときに使う英語が、上に挙げた自然に大きく信頼してしまう道具になります。

 

 我々は、よく理解できていない海外の仕事相手との間で自分の分かる言葉(この場合は英語)が使えることを知ると、それだけで安心してしまうのです。そして知らず知らずのうちに、英語という「共通事項」を過剰評価してしまいます。その結果、本当は理解できていない相手のことを、理解していると思い込んでしまいます。この思い込みが油断となり、色々な問題を起こすきっかけとなるのです。この現象は自分だけでなく、自分の海外のパートナーにも当てはめることができます。

 

 第3章でも考えました通り、コミュニケーションにおいて英語が使えることだけでは、お互いを理解することにつながりません。なぜなら英語という国際語の使われ方や発信される情報は、決して統一されたものになっていないからです。2種類の「英語の障害」、つまり「ネイティブ英語の障害」と「外国英語の障害」は常に存在しているのです。

 

 これを踏まえ、今のあなたの仕事環境を振り返ってみてください。あなたとあなたの海外のパートナーとの関係は、英語という非常に足場の悪い「共通事項」をシェアしているだけの不安定な状態である、と言えないでしょうか。第2章で考えた「文化の壁」の問題、そして第3章で考えた英語が国際語であるがゆえに生じるコミュニケーションの障害(「ネイティブ英語の障害」と「外国英語の障害」)を考えた場合、英語が通じるということだけでは、あなたと海外のカウンターパートとの関係は決して盤石なものではない、むしろ非常に脆いということが言えるのではないでしょうか。

 

 

 

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