第3章 英語で行う会話の本質 【4/5】

国際ビジネスで使われる英語とは、どのようなものなのか

 

 ここで改めて言うまでもないことですが、日本語にも、そして日本のビジネスの世界にも、大変豊かで幅の広い情報伝達のスタイルがあります。また、しっかりとしたビジネス文化も構築されており、情報を相手に伝える際の決まりごと、マナー、そしてそれらに伴う常識なども確立されています。しかし、英語を使って海外の人々とコミュニケーションをとる日本人にとっては残念なことに、こうした「日本流のビジネス常識」をそのまま英語にして活用することはできません。なぜなら、海外ではこの常識が通用しないからです。つまり日本語が母国語である我々も、常にこの「外国英語の障害」と向い合せになっていることになます。

 

 先ほど少し触れましたが、「外国英語」は、情報の作成者と同じ言葉や文化を共有する人たちの間では大変理解しやすい英語です。自分が作成した英語文書を海外のパートナーに送る前に、同僚や上司にチェックしてもらうことがあると思いますが、

 

「分かりやすい。」、「すんなり理解できた。」、「上手くまとまっている。」とか、「日本語の微妙なニュアンスを、上手く英語にできている。」

 

といったリアクションが多い場合は、ご自分の英語が「日本語英語」、「ジャパニーズ・イングリッシュ」になっている可能性がありますので、要注意です。

 

 

3.5. 「外国日本語の障害」にも注意

 

 1つの言語で使われる表現をそのまま別の言語に直訳することによって起きるコミュニケーションの障害は、英語だけがその対象ではありません。「外国英語の障害」としてお伝えしている問題は、英語だけではなく、どの国の言葉に対しても同じ現象が起こります。もちろん日本語も例外ではありません。

 

 多分皆さんもこれまで何度となく「外国英語」ならぬ、「外国日本語の障害」を経験されたことがあると思います。

 

 例えば、日本語に訳された海外の本を読んだとき、訳され方がぎこちなくて何が書いてあるのか理解しにくかった、読みづらかったという経験をされたことがあるかと思います。 または、クオリティが高くない自動翻訳ソフトを使用して外国語を日本語に翻訳してみたところ、出てきたアウトプットの内容がさっぱり分からなかったという経験をされたこともあるでしょう。これらはまさに、「外国日本語の障害」の例です。大体このような日本語の文章は、外国語の原文に用いられている単語やフレーズを日本語に直訳して並べたところでストップしており、日本人なら読めばわかる「日本語の文章」のレベルにまでなっていません。だから情報が上手く伝わらなくなるのです。

 

 上にあげた例は、本の翻訳者やソフトウェアプログラムによって解釈された文書をあなたが読むという状況ですので、発生する問題に対してあなたに非はありません。むしろこういう状況では、あなたは一方的な被害者となります。しかし、英語を解釈し、その結果を他の人々に伝えるのがあなたの役割である場合、もし「外国日本語の障害」による問題が生じたときは、あなたが一方的な加害者になります。「外国英語の障害」と同様に、「外国日本語の障害」にも注意する必要があります。

 

 

3.6. まとめ

 

 この章では、英語が国際語として国や地域を問わず、多くの人々に使われる言葉であるがゆえに生じる障害について考えました。

 

 国際語という役割を果たしている言葉であるからこそ、英語は「奥深い」豊かな言葉であると同時に、情報伝達のための単なる道具という、全く正反対の性質を持つ言葉になっています。英語を使うことによって多くの国の人々とコミュニケーションをとることができるようになる半面、正反対の性質を同時に持つ言葉であるために、意思の疎通が上手くできなくなるだけでなく、コミュニケーション自体を妨げるリスクもあることを説明しました。具体的なリスクとして、「ネイティブ英語の障害」と「外国英語の障害」を挙げ、それぞれの内容を考えました。

 

  ■ ネイティブ英語の障害:英語を母国語とする人(ネイティブスピ

    ーカー)が発信する情報には、ビジネスで使う以外の英語のスタ

    イルが使われていることがある。「ネイティブ英語の障害」は、そ

    のような英語の「奥深い」部分を理解できないと伝えられた情報

    を100パーセント理解できなくなるリスク。これは主に、英語の情

    報がネイティブスピーカーから英語が母国語でない人(ノン・ネイ

    ティブスピーカー)へ伝えられる際に生じる。

 

  ■ 外国英語の障害:英語を母国語としない人(ノン・ネイティブスピ

    ーカー)から発信される英語で、使われる言語は英語なのだけ

    ど、文章の構成やワードチョイス、そして表現の仕方が発信者の

    母国語がベースになっており、情報を受けた側が100パーセント

    理解できないリスク。(我々日本人としては、自らが情報を発信

    するときとノン・ネイティブスピーカーから受信するときの2方向で

    このリスクが生じます。)

 

  

 

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