第3章 英語で行う会話の本質 【5/5】

国際ビジネスで使われる英語とは、どのようなものなのか

 

 残念ながら、「ネイティブ英語の障害」においても、「外国英語の障害」においても、こうすれば解決する、といった即効性のある解決策は存在しません。

 

 もちろん、「ネイティブ英語の障害」については、英語の「奥深さ」についての理解を深めていくことで改善できます。そして「外国英語の障害」についても、情報を受け取ることについては、対象となる国の言葉やビジネス習慣などを理解することで、改善できるでしょう。しかし第2章で考えました「文化の壁」をマスターすることが不可能である理由と同様に、英語の「奥深さ」をネイティブ同様に理解することや、他の国の独特のビジネス常識をマスターすることは、不可能なことなのです。

 

 重要なのは、英語を使ったコミュニケーションを行うことは、この章で挙げた問題が常に存在し、自分がいつでもその影響を受ける、または影響を及ぼす可能性があることを認識することです。リスクを回避できないなら、問題が発生したらそれを最小限に食い止めるようすることが大事なのです。こうした問題、つまりコミュニケーションを阻害する要因があることを理解しながら海外の人々と情報のやり取りすることで、問題の未然防止はできないまでも、問題が発生した際はそれをすぐに把握し、対応できるようになります。こうした認識を持つことが、海外の企業や人々と英語で仕事を円滑に進める効果的な手段をとることにつながります。

 

 即効性のある解決策はないといっても、こうしたリスクに対して何かできることはないのか、と思うのは当然のことです。海外の人々と英語を使って日々コミュニケーションをとる中で、英語の使い方で何かできることはないのか、さらには、概念的なことだけでなくて、実際にアクションをとることによって何かできることはなのか、と思われる方もきっといらっしゃると思います。先ほども記しました通り、第2章で考えた「文化の壁」や、この章で取り上げました2種類の英語の障害を消し去ることはできません。しかしこうした問題がなるべく起こらないようにすることや、起きた問題を最小限に抑えることは、具体的なアクションをとることによって可能になります。

 

 第5章から紹介する内容は、第2章の「文化の壁」の問題と合わせ、「ネイティブ英語の障害」と「外国英語の障害」についても、海外の人々と英語を使って仕事を進展させていく際に、注意したらよい点や、コミュニケーションをよりスムースにするために役に立つ手段を具体的に考えていきます。

 

 次の第4章では、「仕事英語を身につける」前に必要な最後の問題の洗い出し作業をしていきます。

 

 ここまででご紹介しました問題は、これまでの説明である程度はそれらの意味や特徴を浮き彫りにできたと思います。しかしこれらの問題は、まだ一般化された状態から抜け出ていません。つまりこれらの問題は、まだ読者のみなさん一人ひとりにカスタマイズされた状態にまではなっていません。

 

 ここまで読んだみなさんの頭の中では、これまでの説明に対して、「ああ、確かにそんな問題もあるかもしれないなぁ…。」と思う程度に留まっているのではないでしょうか。次の章では、こうした問題が具体的にどのような形で一人ひとりに存在し、影響を及ぼしているかを明確にするプロセスを踏んでいきます。

 

 一口に海外の企業や人々を相手に英語を使って仕事をしているといっていも、置かれた環境は一人ひとり異なるでしょうし、直面している問題も同じではないでしょう。「文化の壁」やこの章でご紹介した2つの「英語の障害」の問題をより具体化していくには、一人ひとりの仕事環境にこれらを当てはめていくプロセスが必要となります。自分が今直面している問題をより明確にすることは、解決すべき事柄がより明確になることにつながります。このプロセスは、自分自身の「仕事英語を身につける」上でも重要なステップとなりますので、じっくりと問題を掘り下げ、カスタマイズしていってください。

 

 

 

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