第5章 セルフ・ポジショニング 【8/8】

予測可能な存在になることのすすめ

 

 もっと簡単にセルフ・ポジショニングを築く方法はあります。これまで紹介した自分の英語のスタイルを確立するほど効果はないにしても、自分の「決まり文句」を確立し、使用し続けることで、セルフ・ポジショニングを築くことは可能です。

 

 Eメールなどの英語の文書で、最も効果的に「決まり文句」を活用できる場所は、結びの前の一文です。英語のビジネスメールでよく使われる結び前の言葉には、下のようなものがあります。

 

  ■ If you have any questions, please feel free to let me know (at

    any time).

  ■ Thank you for your help.

  ■ Thank you for your support.

  ■ I look forward hearing from you soon.

  ■ Please contact me if you have questions or need clarification.

  ■ Don’t hesitate to ask me if you have any questions. など…。

 

 この後に「Sincerely」や「Best regards,」などの結びの言葉が来て、差出人の名前へと続きます。ビジネスのやり取りですので、結び前の一文は上に示した通り、ある程度型が決まっています。従って「自分独自のスタイル」を築くには制限がありますが、毎回必ず同じ「決まり文句」を入れ続けることによって、受け取る側はこの一文と送り手とを結びつけることができるようになることもあります。

 

 この他にメール文書に「決まり文句」を入れるとすると、書き出しの部分となります。例えば、相手の名前を「さん付け」にすることによって独自色を出すことができます。(Peter Smithへのメールの書き出しを「Dear Smith-san」または「Dear Peter-san」のように「さん付け」する。)人の名前を「さん付け」するのは日本人だけですので、自らを日本人として位置付けるには有効な手段となります。ただ、海外の人の中には「さん付け」を知らない人もいますので、誤解や不信を招かないよう注意も必要です。

 

 そのほかには「Dear 」の代わりに「Hello」や「Hi」などのあいさつ語を使うなどして、(「Dear Peter」ではなく、「Hello Peter」や「Hi Peter」で始める)「決まり文句」とまではいかないにしても、自分独自のルールを決めてセルフ・ポジショニングを構築する手段もあります。

 

 

5.6. まとめ

 

 この章は、「セルフ・ポジショニングのすすめ」ということで、海外のカウンターパートに対して自分の位置づけを明確することの重要性をお伝えすると同時に、それを実施するための手段を紹介してきました。その内容をまとめると、以下の3点になります。

 

  ■ 相手の警戒心を解き、よいビジネスリレーションシップを構築する

    には、自分が相手にとって一貫性のある「予測可能な存在」にな

    ること、つまりセルフ・ポジショニングを築くことが重要となる。

 

  ■ セルフ・ポジショニングは、自分の英語スタイルを確立し、変更す 

    ることなく活用し続けることによって効果的に構築することができ

    る。

 

  ■ 自分独自の「決まり文句」を持つことでも、ある程度はセルフ・ポ

    ジショニングを築くことが可能になる。

 

 セルフ・ポジショニングを築くことは海外のカウンターパートとのビジネスリレーションシップを構築する上で、欠かすことのできない要素となります。「文化の壁」や2種類の「英語の障害」がもたらす問題を考えれば、セルフ・ポジショニングを築くことは、海外とのビジネスを進めるうえで必要不可欠なものであることはご理解頂けたと思います。

 

 しっかりとしたセルフ・ポジショニングは、海外の企業や人々と行う仕事を確実に進め、目標の達成をサポートする補助輪のような役割を果たします。セルフ・ポジショニングを築いていくことは根気のいるプロセスになりますが、自分に合ったスタイルを確立することをお勧めします。

 

 

 

  

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