第2章 異なる文化と付き合う 【4/5】

異なる文化を持つ人と接し、仕事をするとはどういうことか

 

 では「文化の壁」に対し、何をすればよいのか、ということなると思います。

 

 「文化の壁」に対応するコツは、それを乗り越えようとするのではなく、それと上手く付き合うことを考え、必要なアクションを細目にとることが大切になります。別の言い方をすると、「文化の壁」は解消できるものではないのですから、それがもたらす障害を最小限に食い止めるよう努めることが最善の措置となるのです。この章のタイトルにもあります通り、異文化と上手にお付き合いする心構えを持つことが一番無理のない対応方法になります。

 

 ここで一つ心に留めておかなければならないことがあります。それは、「文化の壁」は二重構造になっているということです。異なる文化を理解できないのは自分だけでなく、自分のカウンターパート(海外の仕事相手)にも言えることです。自分が相手の国の「当たり前」が理解できないのと同時に、相手も日本の「当たり前」を理解できないのだ、ということを意識する必要があります。

 

 この二重構造が何を意味するかというと、「文化の壁」が起こすコミュニケーションの問題はある特定の人だけでなく、コミュニケーションに参加する全ての人が対処する必要があるということです。自分だけで問題に対応しようとする、もしくはコミュニケーションをとる相手だけに対応を強いるのでは問題は解決しないことを理解しておかなければなりません。

 

 

2.5. 「文化の壁」とお付き合いをする

 

 我々はビジネスを進めていく上で、何をすれば、「文化の壁」とよいお付き合いができるようになるのでしょうか。

 

 「文化の壁」が原因で問題が生じたとしても、与えられた仕事を疎かにするわけにはいきません。また、ここで言うように「文化の壁」と上手く付き合うことができたとしても、仕事が進展しないのでは意味がありません。「文化の壁」があるからという理由で、目の前の仕事や達成しなければならないアクションが消えて無くなる訳ではではありません。

 

 先ほども記しました通り、「文化の壁」は二重構造で、コミュニケーションをとる双方が壁を作る原因になっています。問題の原因は自分を含めたコミュニケーションをとっているすべての人にあることを理解、納得することができれば、問題に対応する道が開けてきます。具体的に何をすれば道が開けるのかは、この本の第5章から、それぞれのテーマに沿ってご紹介していきます。「文化の壁」と上手くお付き合いしていくと、異なる文化を持つ人たちとのコミュニケーションで使う言葉(ビジネス英語)の使い方と密接なつながりが出てきます。別の言い方をすれば、英語を効果的に使うことができるようになって、初めて「文化の壁」の対処法が見えてくることになります。

 

 英語を使ったビジネスコミュニケーション能力を向上させることは、単に英語という語学を勉強するだけでは達成できません。もちろん、英語の機械的・技術的な部分の理解度を深めることは大切ですが、それが英語を使って効果的にコミュニケーションをとることに直結するわけではないことを理解してください。英語の語学的な知識を高めるために、色々な努力をされている方には耳障りな話かもしれませんが、これは事実です。

 

 今の日本の英語教育は、機械的な部分(メカニックス)を徹底的に学習するスタイルがよいとされています。現在の日本人にとって英語のコミュニケーションが難しくなっているのは、英語のメカニックスの知識に頼りすぎているからかもしれません。英語は、多くの人々の間で日々の生活において使われる言葉です。その言葉が人々の生活に密着しているということは、この章で検討しました文化や習慣に関連する要素もそこに含まれていて当然なのです。

 

 英語のスキルを上げるために機械的な要素を集中して習得したとしても、大きな効果は期待できません。メカニックスの裏にある、異なる文化や習慣に対する理解を深め、対応するスキルも磨いていかなければなりません。

 

 

2.6. まとめ

 

 この章で考えてきたことをまとめると、以下のようになります。

 

  ■ 「文化の壁」は海外の人とコミュニケーションにおいて常に存在

    し、コミュニケーションを妨害する原因となる。

  ■ 異なる文化や習慣を理解することは、非常に難しい。マスター

    することは現実的ではないと考えたほうがよい。

  ■ 「文化の壁」は解消したり、乗り越えたりするものではない。障害

    の影響を最小限にするよう努め、上手にお付き合いすることが大

    切。

  ■ 「文化の壁」は、二重構造になっており、コミュニケーションに参

    加する人全員が障害をもたらす原因の一部であることを認識す

    る。

  ■ 「文化の壁」と上手にお付き合いする方法は、コミュニケーション

    をとる相手に対する英語の使い方と密接なつながりがある。

 

 文化の違いを考慮することは、海外の人とコミュニケーションをとる上で必ず必要となります。いくら英語のスキルが高い人でも、相手の文化や習慣に対し考慮しないコミュニケーションを続ければ、必ず何らかの問題が生じます。

 

 

 

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