第8章 英語で仕事を進展させる 【2/4】

いくら英語ができても、仕事が進まなければ意味がない…

  

 仕事を進めるうえで常に認識しておくべきことは、自分が進める仕事には、このような自分ではコントロールできない阻害要因が存在ことです。そしてそれは自分の所属する組織だけでなく、自分のカウンターパートが所属する組織にも平等に存在することも頭の片隅に留めておくことです。この認識を持ちながらビジネスコミュニケーションを重ねることで、相手に対して、そして相手が直面している状況について理解を深めることができるようになります。あなたのカウンターパートにも同様の認識を持ってもらうができれば、仕事を進める上での人間関係の構築はよりスムースに進めることができるようになるでしょう。

 

 では、上に記しましたポイントを受けて、再び視点を英語のコミュニケーションの質を上げることに、つまり「仕事英語を身につける」ことに戻しましょう。そして上に挙げた自分ではコントロールできない阻害要因の存在を理解した上で、海外のカウンターパートと進める仕事をスムースするコミュニケーション手段を考えていきましょう。

 

 

8.3. 目的と現在位置を常に共有する

 

 海外のパートナーとの仕事において、通常よりも頻度を上げて行うべき作業にベクトル合わせのコミュニケーションがあります。

 

 ベクトル合わせのコミュニケーションとは、仕事の進捗状況の共有と確認のために行う情報交換作業です。今進めている仕事は工程上どの位置にあり、この先何を行う必要があるのか、そして、仕事を進めるうえでの問題点(またはリスク)は何か、といった事柄についての意思の共有を図ることがベクトル合わせのコミュニケーションです。ベクトル合わせは仕事をする相手が誰であろうと必要なプロセスです。しかし海外の企業や人々相手の仕事では、必然的に認識のずれが生じやすい環境ですので、これについてのコミュニケーションを通常よりも多い頻度で行うことが大切です。

 

 もちろん、ベクトル合わせのコミュニケーションをとることで、上に挙げた事業運営管理の問題が解消することはありません。しかしこうした情報交換を行うことで、進行中の仕事に関係することでお互いの職場・組織で起きている問題・事情などを理解する機会を増やすことにつながります。海外の仕事相手との頻繁なコミュニケーションは、事業の運営全体をコントロールすることはできないまでも、不測の事態において的確に対応する材料を与えてくれます。

 

 

 ベクトル合わせのコミュニケーションの使い道は、これだけではありません。

 

 仕事を進めるにあたり、関連する人や部署が多くなればなるほど、このコミュニケーション手段の重要性が増してきます。仕事の規模が大きくなれば、複数のタスクを同時進行させなければならなくなります。同時に進めるタスクが増えれば、それに比例して携わる仕事も複雑になります。海外の人たちとこのような仕事を進めていく場合、仕事の進み具合に対する認識のずれがないかを細かく確認する必要があります。

   

 第2章でもお伝えしましたように、文化や習慣が異なるということは、その人が持つ「当たり前」と自分が持つ「当たり前」が必ずしも一致しないことでもあります。従いまして、今行っている仕事に対する重要性・プライオリティーの基準や存在するリスクの認識などは、たとえそれがどんなに「当たり前」と思えることでも、自動的に一致しないことを頭の片隅に置いておかなければなりません。

 

 例えば、ある日本の企業と、ある海外企業とが製品を共同開発することになったとします。この日本の企業は、開発スケジュールは厳守・順守することが当然と考えているのに対し、パートナーとなるこの海外の企業においては、開発スケジュールは理想的な目標であるという認識が当たり前であるとします。このプロジェクトが始まる前に、開発スケジュールを守ることに対する認識を共有しないままスタートしてしまったとしたら、もうこの時点でスケジュール通りの進捗が見込めません。この日本の企業は、間もなく大きな問題に直面することになるでしょう。

 

 上に挙げた例は少々極端かもしれませんが、異なる文化や習慣を持つ人たちと一つの目標に向かって物事を進めるときは、多かれ少なからこうした「当たり前」のずれがあるものです。ですから、海外のカウンターパートに対しては、自分たちが到達しようとしているゴールについて、そして進捗具合についての認識を細目に一致させるアクション(コミュニケーション)が必要となります。

 

 

 (例文1:フェーズ2プロセス終了に対する認識の確認)

 

   Hello Mr. AAAA,

 

   I would like to inform you that we have found the following as a   

   result of our research. Please see the attached report for the

   details of our findings.

   (ここに調査の結果についての説明が記されます。調査の内容に

   ついてはこの章でお話しするトピックとは関係ありませんので、割

   愛します。)

 

   (ここからベクトル合わせのコミュニケーションに入ります。)

   With these actions completed, we believe that we have

   covered all the required actions for the Phase 2 of this

   project. Do you agree?

 

   Please provide your views on this matter so that we make clear

   of where we stand right now on this project. 

 

   I will set up a conference call to discuss our next actions for the

   Phase 3 after I receive your confirmation.

 

   If you have any questions or concerns, please let me know.

 

   Best regards,

   BBBBB

 

 

<<前に戻る               次に進む>>

  

  

                サイトの利用条件    個人情報の扱いについて